運営元に関する報道でテザーが週末に小幅安

ステーブルコイン最大のテザーだが、週末に運営元企業に対し米当局の捜査が入ったとの報道が流れた。この報道を受けて本来動かないはずのテザーのレートが0.3％ほど下落したが、その後テザー社は報道を否定した。

影響で他の仮想通貨も下落

　テザー（USDT）はステーブルコインとして世界最大の規模を持ち、10月28日現在の時価総額は約1,200億ドル（約18兆3000億円）と仮想通貨としてビットコイン（BTC）とイーサリアム（ETH）に次いで3位にある。

　テザーはステーブルコインなので、そのレートは米ドルと1：1で固定されている。しかし先週末に米経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルが、「テザー社はマネーロンダリング防止規定などに違反しているとの疑いで、米当局から捜査を受けている」と報じた。

　この報道を受けて日本時間の26日土曜午前5時過ぎにテザーがわずかに下落し、一時的にだが1USDT＝0.997ドルをつけた。だがこの下げは一時的なもので、すぐに0.9985ドル付近まで反発。その後は大きな動きはなく、27日日曜から28日月曜にかけて0.9985～0.999ドルのレンジで安定推移している。

　またテザー社のアルドイノCEOは、週末中にX（旧Twitter）上で報道内容は虚偽だと否定した。

　一方この報道によってビットコインやイーサリアムなど他の仮想通貨も26日未明頃に1～2％下落。だがその後はアルドイノCEOによる否定発言で懸念が遠のき、27日から28日にかけて上昇している。

　今回は単なる誤報で終わる可能性があり、大きな材料にはならなかった。しかしステーブルコイン・テザーの突然の変動は、2022年5月にあったテラショックを思い起こさせる。

　ステーブルコインのテラ（UST）は、2022年5月に突然アルゴリズムが崩れて米ドルとのレート連動ができなくなった。その影響で同じ企業が発行していた同名の仮想通貨・テラ（LUNA）の価値が大暴落し、ほぼゼロになってしまった。

　テラ（LUNA）が大暴落し無価値になったことでテラを保有していた投資家は損失を抱え、この影響で仮想通貨市場全体も暴落するテラショックとなった。

　同じステーブルコインのテザーが崩壊するようなことがあれば、仮想通貨市場をテラショックより遥かに大きな衝撃が襲うであろう。しかしテザーとテラ（UST）は根本的に仕組みが違う。テラ（UST）はアルゴリズムによって米ドルとの連動を維持するタイプのステーブルコインで、アルゴリズムが崩れたためにレートも崩壊した。それに対してテザーは米ドルを担保として預託するタイプだ。

　テザーがテラ（UST）のように崩壊する可能性は相当低いが、仮に崩壊したら大変なことになる。先週末の報道とその後のテザー下落は、仮想通貨業界にとってヒヤッとする出来事であった。