株価はすでに景気と全く関係なくなった

パンデミックが当初の想定以上に長期化しており、世間では人員削減や店舗閉鎖などを発表する企業が続出している。しかしこれだけ景気が悪くでも株価だけはバブル後の最高値を更新。もはや株価は景気と全く関係のない指標になった。

かつて株価と景気は連動していた

　以前から株価と景気には一定の相関関係があると言われてきた。「株価は景気の先行指標」とも言われるように、株価が下がるとそのしばらく後に景気後退が起こり、逆に株価が上がるとしばらく後に景気が良くなることが多かった。

　実際過去数十年はそのように、景気と株価が相関関係をもって動いてきたことが多い。1980年代のバブル時代は日経225平均が史上最高値の約39,000円まで上がったのだが、この当時は実体経済もかなり良かった。

　また2003～07年頃株価が上昇トレンドにあり、その間「いざなみ景気」と言われた長い景気拡大期間が続いた。そして2008年後半にはリーマン・ショックで世界の株価が大暴落し、その後世界は強烈な景気後退に陥った。

　しかしすでに経済記事などでよく言われていることだが、2020年にCOVID-19（新型コロナウイルス）のパンデミックが世界に拡がってから、同様の法則が成り立たなくなっている。

　パンデミックが長期化しており2021年になっても早期の終息が見えないので、春から夏にかけてなんとか耐えていた大企業も、最近になってリストラや店舗閉鎖などの経営合理化案を次々と発表している。

　11月11日に発表されたものだけでも、旅行代理店大手の近畿日本ツーリストの持株会社であるKNT-CTホールディングスが、グループ従業員約7,000人の3分の1を削減し、個人旅行を扱う138店舗の3分の2を閉鎖する大合理化計画を発表した。

　「洋服の青山」の青山商事も同じ日に、約800店ある店舗の2割を閉鎖し、希望退職を400人募る計画を発表した。特にKNTの方の店舗3分の2削減や従業員3分の1削減はすさまじい大リストラだ。

　そしてこのような発表は最近では珍しくもなくなった。パンデミックは業界によって影響が大きく変わり、IT業界などは逆に業績が伸びている企業が多い。しかし旅行関連など非常に大きなダメージを受けている業界を中心に、人員や店舗などを減らす動きが急激に拡大している。

　また有効求人倍率も下がり続けており、9月は1.03で9ヶ月連続低下となった。これらの数字やニュースが示すように、日本経済はかなり悪い状態にある。

　実体経済が悪い一方株価はどうか？日経225平均は米大統領選の週からすごい勢いで上昇し、11日には終値が25,300円を超えて1991年以来29年ぶりの高値となった。実体経済が極めて悪いのに、株価だけは絶好調の状態にある。

　もはや株価と景気に相関関係があるという説は全く成り立たなくなった。パンデミック下ではこれまでの常識が一切通用しなくなっており、株価と景気が逆に動いているのもその現象の一環であろう。しかしリストラされて生活に困る人々がいる一方、株を持っている富裕層は資産をどんどん増やしていくいびつな世界になってしまった感がある。