日銀利上げで住宅ローン金利への影響は

日銀が7月31日に政策金利を0.25％引き上げ、その後8月1～5日にかけて株式市場が大暴落した。株式市場はかなり落ち着いたものの、利上げの影響はこれから住宅ローン金利にも及んでくる。

月返済額の増加は5年後

　日銀が7月31日についに政策金利を0.25％に引き上げた。今年になってから円安に歯止めがきかなくなっており、為替介入を今年だけで4回も行った末の苦渋の決断であった。

　しかし利上げの影響は日銀が想定していたよりはるかに大きく、株式市場は8月1～5日の3営業日で日経225平均が8,000円近くも下がる歴史的大暴落となった。その後日銀の内田副総裁が追加利上げに慎重な発言したことなどから、株式市場は一旦落ち着いた。

　だが利上げの影響は今後他の方面にも出てくることになり、直接的に影響されるのが住宅ローン金利だ。住宅ローン金利には固定金利と変動金利があり、固定金利は長期金利に影響される。そしてここ2～3年は日本の長期金利が上昇しているため、住宅ローンの固定金利はすでに上昇傾向にある。

　一方変動金利は短期プライムレートによって決まり、短期プライムレートは政策金利によって決まる。つまり政策金利の引き上げが直接的に影響するのは変動金利の方だ。まだ利上げから半月しか経っていないので実際に変動金利の引き上げを発表している銀行等は少ないが、今後上がってくることは確実だ。

　まずは住宅ローン変動金利の基準となる短期プライムレートの引き上げが先に行われる。日銀が公表している国内の主要都市銀行が適用する短期プライムレートは、2009年1月以来ずっと1.475％に維持されている。まずはこのレートが各都銀によって0.2％前後引き上げられるだろう。地方銀行の中には、すでに短期プライムレートの引き上げを発表したところもある。

　短期プライムレートが引き上げられると、それが住宅ローン変動金利引き上げにつながる。変動金利は4月と10月の年2回見直しされるケースが多いため今すぐには変わらないものの、今年10月の見直しで引き上げられる金利が出てくると予想できる。

　そして10月に引き上げられると、その変更は来年1月から適用される。ただし住宅ローンには返済者の負担を減らすルールがある。その1つは「5年ルール」で、変動金利が引き上げられてもその後5年間は毎月の返済額を変えてはいけないというもの。

　つまり来年1月から変更があったとしても、実際に返済額が増えるのは2030年1月とかなり先になる。ただしこれは毎月の返済額を5年間据え置きにするだけで、変動金利が上がることによって変わった返済総額まで抑えられるわけではない。金利が上がったことで増えた返済分は、返済期間が延ばされることによって将来支払うことになる。

　もう1つは「125％ルール」で、これは5年ルールの適用が終わった後も、毎月の返済額はそれまでの125％までしか増やしていけないというもの。つまりこれまでが毎月10万円なら、12万5000円までしか増やせない。しかしこれも5％ルールのように、毎月の返済額で増やせない分は将来的に返済期間が延びることで支払わなくてはいけない。

　このようにすぐに返済額が増えて生活が圧迫されるわけではないが、日銀の利上げの影響は長期間をかけて変動金利住宅ローンの返済者に影響してくるのは確実だ。