日米要人の発言で円が急騰

17日の朝方から日中にかけ、トランプ大統領や河野デジタル相といった日米の要人が相次いで現在の円安・米ドル高をけん制する発言を行った。そのため17日午後以降に円が急騰して1ドル＝156円台をつけた。

約1ヶ月ぶりの円高水準

　今年になってからまた円安が進行しており、先週の11・12日には日銀が2日続けて為替介入を行ったとの観測が出ているが、根本的な円安の歯止めにはなっていない。

　そして17日午前中頃に放送されたアメリカのテレビインタビューで、トランプ元大統領が「米ドルと日本円、米ドルと人民元のかい離は信じられない」と米ドル高、円安、元安を好ましく思っていない趣旨の発言を行った。

　しかし同じくインタビュー中で近い将来のFRBによる利下げについて「やってはならない」と述べていた。FRBが利下げをすれば米ドル安に動くのがセオリーなので、円安・米ドル高をけん制した発言と同じインタビューでこの発言はやや矛盾しているように見える。こちらの発言の意図は、選挙前に利下げをして景気が底上げされると大統領選でバイデン大統領に優位に働くので、そうならないよう釘を刺したものと見られる。

　「（近い将来の利下げは）やってはならない」と発言したこともあり、トランプ大統領のインタビュー直後には為替はそれほど動かなかった。だが午後3時頃になって、今度は日本の河野デジタル相が同じくメディアのインタビューで、物価高への対処などのため「日銀に利上げをするよう求める」と発言した。

　この発言の前後から為替が大きく反応した。午後2時頃にはまだ1ドル＝158円20銭だった米ドル/円は、その後円高に動き河野デジタル相のインタビューが伝わった午後3時頃から円高が加速。午後5時頃には約1ヶ月ぶりの円高水準となる156円10銭をつけた。

　また円高は日本株にとって売り材料となった。東証の後場開始直後には41,400円付近だった日経225平均は円高を受けて後場に下落し、場中終了後の夕方に先物がさらに大幅安となり夜には後場開始直後より1,000円ほど安い40,400円台をつけている。

　17日日米要人の発言で大きく円高に動いた為替市場だが、日本の閣僚がこのように直接的な発言で日銀に利上げを求めることは珍しい。それだけ現在の円安水準が日本にとってマイナスになっており、国民や財界をはじめ是正を求める声が高まっていることの表われでもある。

　ここまで利上げを求める圧力が高まれば、日銀は今月末の次の会合でいよいよ利上げを行わなくてはならない。前回・6月の会合で今後の国債買い入れの減額方針を発表し、具体的な計画は次回の会合で発表すると述べていた。

　したがって今月末の会合で国債買い入れの減額計画が発表されることは確実だが、問題はそれ以上の利上げがあるかどうかだ。発表されれば為替は円高で反応するかもしれないが、減額計画だけだと市場は失望して結局円安に動くのではないか。