大物仕手集団の元代表が逮捕される

バブル前の昭和の時代から「大物仕手筋」として知られていた加藤暠（あきら）が、17日に相場操縦の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。また同じ容疑で加藤容疑者の妻と長男も同時に逮捕されている。

新日本理化株を不正に吊り上げ

バブル経済の大相場があった1980年代後半以前は、まだコンピューターもあまり普及しておらず、個人がパソコンやスマホから自由に株式投資もできない時代だった。当時は個人が株式取引をしたいなら、証券会社に出向くか電話で注文を出すしかなかったのだ。

しかし74歳の加藤は、その時代から相場でさまざまな手法を駆使して莫大な利益をあげていたと言われる。昔は「誠備グループ」という仕手集団を率いて、その資金を使っていろいろな銘柄で投機行為をしていた。

最近になって今度は「般若の会」という投資団体を設立したが、この会も特定の株式銘柄を意図的に吊り上げたりしていた。その中でも特に派手に動かしていたと言われるのが、新日本理化（銘柄コード：4406）だった。

新日本理化株は、基本的には右肩上がりの動きはしない株だった。しかし1990年代に2度、不自然なほど急激に上昇し、数ヶ月後にはピークをつけてその後は時間をかけてまた下がる、という動きを見せたことがある。これが仕手によって吊り上げられた典型的な株の値動きなのだ。

そして東日本大震災の2011年春頃から、般若の会の掲示板に「新日本理化株は今後暴騰する」という書き込みが目立ち始める。もちろん匿名なので、実際に誰が書いたのかは、閲覧者にとっては分からない。

新日本理化株は2011年3月に66円で底値をつけたが、そこから暴騰を始め、1年後の12年3月には約20倍の1,297円まで上昇した。この時掲示板に「今後暴騰する」という書き込みを繰り返したのが加藤本人や関係者と見られている。また他の銘柄についても同様の行為を繰り返していたことで、加藤は9月に東京地検特捜部に告発された。

それからの今日の逮捕となったわけだが、すでに述べたように、今日逮捕されたのは加藤の妻と長男も含まれている。妻や長男は、新日本理化株に対して大量の買い注文を出し、株価を吊り上げた相場操縦の容疑で逮捕された。まさに家族ぐるみで相場の不正を行っていたということになる。

加藤は「大物仕手筋」と呼ばれているが、最近株式市場で有名な人物としてはいわゆる「デイトレーダー」の方がよく知られている。パソコンやスマホを使って個人でトレードを行い、中には数百億円もの資産を築いたトレーダーもいる。加藤のようなやり方は、どちらにしても今の株式市場では使い古された手法なのではなかろうか。