口座維持手数料を取る仮想通貨取引所も

先週になって英の海外仮想通貨取引所が、長期間取引がなく残高も少ない口座から口座維持手数料を取るとの措置を発表した。日本ではまだ例がない仮想通貨取引所の口座維持手数料だが、今後少しずつ世界で広がっていくかもしれない。

取引・残高が少ない口座に手数料

　Bitstamp（ビットスタンプ）という海外取引所があるが、この取引所の英国法人が先週になって口座維持手数料をかける措置を発表した。

　口座維持手数料がかかるのは、過去12ヶ月間取引がなく、かつ残高が200ユーロ（約27,800円）以下の口座。手数料は8月1日から適用され、月額10ユーロになるという。ユーロではなく仮想通貨で支払うこともできる。

　日本国内外を問わず、仮想通貨取引所は基本的に口座維持手数料というものはこれまでなかった。しかしここにきてこのような措置を発表する取引所が出てきたのは、2021年末以降の仮想通貨市場低迷で各取引所の経営が厳しくなっていることを意味している。

　仮想通貨業界は最近苦境に陥っている企業が多い。アメリカのCelsius（セルシウス）という仮想通貨レンディング企業が、6月13日に突然出金を停止して仮想通貨業界を震撼させた。この措置のため13日は仮想通貨市場全般が暴落した。

　その後もCelsiusの経営は危機が続き、6月末には連邦破産法第11条（日本の民事再生法に相当）の申請を検討していると報じられた。

　昨年4月にはNY株式市場に上場を果たして話題になった米仮想通貨取引所のコインベースも、仮想通貨市場低迷の影響から逃れられていない。コインベースは今年6月になり、全世界の従業員の18％に相当する1,100人を削減する計画を発表した。

　しかし口座維持手数料は仮想通貨業界では珍しいが、銀行業界ではそれほど珍しいことではない。日本では最近までほとんど導入されていなかったが、海外では口座維持手数料は以前から多くの銀行がかけていた。

　現在シティバンクは日本で個人向け預金業務は行っていないが、以前行っていた頃は30万円以下など小口の預金口座には口座維持手数料がかけられていた。

　そして日本でも最近は導入されつつある。三菱UFJ銀行は、2021年7月1日以降に開設された口座について、2年以上未利用の場合年間1,320円の手数料を取る。また多くの銀行がペーパーレス化を進めており、紙の通帳を作る口座には手数料を課す銀行が増えている。

　日本では証券会社の口座はほとんど手数料がないが、海外では証券会社でも口座維持手数料を取るところもある。仮想通貨業界の話に戻ると、現在の仮想通貨市場の低迷のためにBitstampのように苦肉の策として口座維持手数料を導入する取引所は、これから増えていくのではないかと予想される。