任天堂のマリナーズ株売却は一時代の終焉

ゲーム大手の任天堂が、これまで24年間オーナーとして株式の大半を保有していたメジャーリーグ球団・シアトルマリナーズの株式の一部を、他社に売却したと発表した。

バブル後の1992年に買収

任天堂とマリナーズの関係は1992年に始まったので、これまで24年間とかなり長い。そもそも「マリナーズ株」とはどんな株だろうか？

シアトルマリナーズは米メジャーリーグの1球団で、アメリカ北西部のシアトルに本拠地を持つ。プロスポーツチームと言えどもビジネスとして行っているので、その経営には企業の形態をとっている。

多くの関連記事では「マリナーズ株」と言われるだけで詳しく書かれていないが、マリナーズを運営している会社は「ファースト・アベニュー・エンターテイメント（First Avenue Entertainment）」と呼ばれる会社だ。任天堂が保有する「マリナーズ株」と呼ばれる株は、この会社の株のことになる。ちなみにNY証券取引所などに上場はしていない未公開株になる。

マリナーズはメジャーリーグの中でもそれほど強豪チームとは言えず、これまでワールドシリーズの優勝経験どころか、アメリカン・リーグの制覇もない。イチローが移籍した2001年には年間116勝というメジャー記録で西地区優勝を達成したが、これは地元では大ニュースになっていた。

このようなチームなので、マリナーズについては歴史的に度々経営難や身売り、あるいは移転のニュースが流れていた。任天堂がマリナーズを買収した1992年の前も、そのような経営難に陥っている最中だった。

そこで任天堂が買収するという話になったのだが、当然ながらアメリカの野球チームを外国である日本の企業が買うということで、アメリカ国民の反発はかなりあった。しかし持株比率を過半数に満たない49％に抑えるということで双方が納得し、買収が成立。任天堂と当時の山内社長が筆頭株主になった。その後は山内元社長が死去しているため、米国任天堂が山内氏の持株を引き受けて現在に至っている。

そして今年になっての株売却となった。売却のニュースは今週になって初めて流れたわけではなく、4月末にすでにマリナーズが発表していた。それが今週になって正式に決定・売却されたので、改めてニュースになった。売却額は6億6100万ドル（約661億円）。米国任天堂は全てのマリナーズ株を手放したのではないが、残りの保有分は10％のみとかなり比率は低くなった。

もともと任天堂は筆頭株主時代でも、マリナーズの経営にあまり口出しはしなかった。したことと言えば、当時の山内オーナーがイチローを必ず取るように厳命していたことくらいと言われる。そのためマリナーズの経営自体にはあまり変化はないだろうが、1つの時代が終わったことは間違いない。