仮想通貨市場は現在の上昇を維持できるのか

2023年末から現在までの1年あまり仮想通貨市場は上昇してきた。楽観的あるいは強気な仮想通貨業界関係者は今後もこのような上昇が続くとの予想を述べているが、現実がそこまで上手く行くとは限らない。

円安によるかさ上げも

　2023年末から現在にかけての1年あまり、仮想通貨市場は上昇してきた。最初のきっかけになったのはビットコインETFの承認見通しで、アメリカで2023年夏頃に申請された複数のビットコインETFの承認見通しが同年11月頃に高まるとビットコイン（BTC）などが大きく上昇した。

　1月にビットコインETFが承認・上場され、その後順調に資金流入が続いたことも特にビットコインの買い材料となり一時は1,600万円を超えた。

　その後夏から秋にかけてやや停滞していた時期もあったが、11月の米大統領選でトランプ大統領が勝利したことで選挙後はまた仮想通貨に買いが殺到した。

　とはいえ1月20日にトランプ大統領が就任した後は、期待されていたほどの仮想通貨優遇政策が出てこないためその後仮想通貨市場は停滞している。就任式の日前後に一時1,700万円をつけて最高値を更新したが、その後は最高値更新が見られず最近では1,400万円台でくすぶっている。

　それでも仮想通貨の将来に楽観的あるいは強気なアナリストや仮想通貨業界関係者は、「ビットコインは今年中に20万ドルになる」のような強気な予想を出し続けている。

　しかしそれらの予想のように仮想通貨市場が上がり続けるだろうか？まずは2023年末以降の仮想通貨上昇をよく見てみよう。確かにビットコインは上昇しているが、他の仮想通貨はかならずしも上がっていない。

　正確に言うと仮想通貨市場全体は上がっているが、個別通貨を見ると2021年につけた高値を更新できていない通貨も多い。

　また2022年から急激な円安になったので、仮想通貨の円建てレートは円安の分だけかさ上げされている。米ドル建てで2021年のピークと2024～25年のピークを比べても、円建てに比べるとパフォーマンスは悪い。

　ビットコインは2021年の高値が6万3000ドル、ここ数ヶ月の高値が10万7000ドルなので、2021年と比べて50％以上は上昇している。

　だがイーサリアム（ETH）、リップル（XRP）などトップクラスを除く他の主要通貨はそこまで高い伸び率を見せていない。例えばソラナ（SOL）は2021年に250ドルの高値をつけ、今年1月の高値は285ドルなので14％伸びたのみだ。

　カルダノ（ADA）は2021年に3ドルまで上昇したものの、直近の高値は昨年12月の1.2ドルで2021年の40％程度の水準しか回復していない。かつては仮想通貨の時価総額4位だったライトコイン（LTC）は低迷しており、2021年の高値は360ドルだったが最近はようやく3分の1の120ドルまで上昇した。

　2017年8月にビットコインから分裂してできたビットコインキャッシュ（BCH）は分裂直後の2017～18年の年末年始に4,000ドルをつけたのがピーク。2021年の上昇でも高値は更新できず、直近では昨年4月に700ドルをつけたのが最高だった。

　このように2023年末以降の仮想通貨高は、上がった通貨とそうでない通貨の差が大きい。ビットコインは確かに大きく上昇したが、その背景には米企業のマイクロストラテジーのように猛烈な買いを続けている投資家の存在がある。

　マイクロストラテジーは2020年頃からビットコインを買い続け、現在の保有数は約47万枚、1枚＝1,500万円で計算すると約7兆円もの資産になっている。マイクロストラテジーはそれでもまだビットコイン買いを止めず、最近では社債や株式発行で調達した資金をビットコイン買いに使っている。社債を発行して買うということは借金をしてビットコインを買うようなものであり、今後ビットコイン価格が下がれば破綻する恐れがある。

　このように2023年末以降の仮想通貨高は米ドル建てで見ると円建てほど上昇していない、上がっている通貨が偏っている、そしてビットコインは一部の猛烈な買いに支えられているという特徴がある。このような状況が今後も続きビットコインの上昇が続くのかどうかはかなり疑問だ。