仮想通貨市場にテラ（UST）ショック走る

ステーブルコインのテラという通貨が今週になって米ドルとのペッグを維持できなくなり、その影響で同名の仮想通貨・テラが大暴落。テラの問題は仮想通貨市場に激震を走らせた。

アルゴリズムが狂った!?

　テラ（UST）というステーブルコインがある。ステーブルコインとは法定通貨にレートをペッグ、つまり固定した仮想通貨のこと。テラ（UST）は米ドルに1：1でレートをペッグしていた。

　また同名のテラ（LUNA）という仮想通貨もある。どちらもテラフォームズ・ラボという企業が発行している仮想通貨なので、両者には非常に深い関係がある。

　そして今週になって、テラ（UST）が米ドルとのペッグを維持できなくなり、一時は1UST＝30セント近くまでレートが下がった。

　こうなった原因の1つに、テラ（UST）はアルゴリズム型ステーブルコインだった点があると言われる。ステーブルコインとして世界で最も普及しているテザー（USDT）は、担保型ステーブルコインと言われるタイプ。こちらは購入するにあたり米ドルを預託することが義務になっているので、テザーの発行数と同じ額の米ドルが預託されていることになる。

　それに対してアルゴリズム型ステーブルコインとは、アルゴリズムを使って発行量を調節することで法定通貨とのペッグを維持するというもの。常に新しく発行したりバーン（仮想通貨の削除）をしたりして調節しているのだが、今週になってそのアルゴリズムが上手く機能しなくなったと見られる。

　この問題のためテラ（LUNA）は大暴落。5月6日時点では10,000円だったテラ（LUNA）のレートは、6日に一瞬だけテラ（UST）が米ドルとのペッグを維持できなかったためこの日以降暴落。10日の午後10時頃には4,500円だったが、そこから大暴落が始まり11日午後10時頃には一時98円と24時間で98％安となった。

　11日の仮想通貨市場はテラショックに加え、午後9時半に発表された米4月消費者物価指数が予想を上回ったために米金融引き締め加速観測が高まり下落。午後10時過ぎ時点で、ビットコイン（BTC）やイーサリアム（ETH）は過去24時間で約10％安。ソラナ（SOL）、カルダノ（ADA）、ポルカドット（DOT）といった新興通貨は同20～30％安だった。

　テラフォームズ・ラボは「アンカー」というプロジェクトを運営しており、参加者には最大で19％もの高い利回りを提供していた。だがこのような高利回りを維持することは難しく、今回のテラ（UST）のペッグ崩壊はアンカーの仕組みが崩壊したことの影響と見られている。

　ステーブルコインはほぼ法定通貨のような存在のため、アメリカなど海外では規制の強化が議論されていた。今回のような事件は規制強化への強い追い風となるだろう。