仮想通貨低迷がNVIDIAの業績にも影響

パソコン用のGPU開発・製造などを行うNVIDIA（エヌビディア）が、日本時間の25日早朝に5～7月期の決算を発表。しかし売上高が予想を15％以上下回るなど低調な決算だった。仮想通貨市場の低迷が、NVIDIAの業績低迷の一要因となったと見られる。

マイニングでGPU需要激増だったが…

　パソコン用のGPUなどの開発・製造を行う米NVIDIA（銘柄コード：NVDA）が、24日のNY株式市場終了後（日本時間25日早朝）に5～7月期の決算を発表した。

　CPUとは「グラフィックボード」と呼ばれることもあり、パソコンなどのグラフィック能力を向上させるための部品。最近までは主にゲームで高度なグラフィックを滑らかに動かすために利用されてきた。しかし仮想通貨が台頭すると、仮想通貨のマイニングに使われることが増えた。

　そしてNVIDIAは珍しい1月決算の企業でもある。したがって今年の5～7月期は、2023年度の第2四半期にあたる。

　今期の売上高は前年同期の65億ドル（約8,900億円）から3％増の67億ドル（約9,200億円）で、市場予想の81億ドル（約1兆1000億円）を大幅に下回った。また前期2～4月期が83億ドル（約1兆1400億円）だったので、前期よりも大きく減少した。

　純利益は6億5600万ドル（約900億円）で、前年同期の24億ドル（約3,300億円）から4分の1近くにまで激減した。またEPS（1株あたりの利益）は0.26ドルだった。

　しかしこれらの利益額は、アメリカの正式な会計基準に基づいたGAAPベースの数字。米企業はGAAPベースの他に、非公式なnon-GAAPベースの利益額も発表している企業が多くNVIDIAもその1つになる。

　non-GAAPベースだと今期の純利益額は12億9000万ドル（約1,770億円）になり、EPSは0.51ドルになった。

　そして来期である8～10月期の見通しもかなり悪く、来期の売上高見通しは59億ドル（8,100億円）と、市場予想の69億ドル（約9,450億円）を大きく下回った。

　今期の業績が悪かったのは、ゲームと仮想通貨市場の低迷によるところが大きいと見られる。すでに述べたようにGPUはゲームに使われるため、2020年のパンデミック開始後はゲーム需要が伸びて同社の業績も跳ね上がった。またゲーム需要に加え、2021年には世界的ブームとなった仮想通貨のマイニング需要もNVIDIAの業績を押し上げた。

　2020年1月期の通期売上高は109億ドル（約1兆5000億円）だった同社だが、2022年1月期には269億ドル（約3兆7000億円）と2倍以上になった。

　だが2022年になるとアメリカを初め各国とも巣ごもりから離れて通常の生活に戻っていく。さらに今年は仮想通貨市場が低迷しているため、マイニング需要も低下。そして仮想通貨でもマイニングを使用しないPoS（プルーフオブステーク）採用の通貨が増えているため、マイニング自体の需要が伸び悩んでいることもある。

　これらの要因によって今期のNVIDIAの業績は低迷し、来期の見通しもよくなかった。そして決算発表後の時間外市場で、同社の株は前日比3％安付近で推移している。巣ごもりとマイニング特需がなくなれば、同社の今後はやや厳しくなるかもしれない。