パウエル議長が解任されたら何が起こるのか!?

トランプ大統領は利下げをしないパウエル議長に対して不満を高めており、解任に向けて動いている。今のところ可能性は低いものの、本当に解任されたら金融市場がまた大変動する可能性が高い。

解任に意欲的な大統領

　4月3日に発表されたトランプ政権の相互関税によって、4月前半は金融市場が大変動した。後半になってようやく落ち着くかに思われたが、トランプ大統領はまた大きな材料を出してきた。

　先週の日本時間17日木曜未明にFRBのパウエル議長が行った講演で、議長は関税政策の米経済への影響に対する懸念を示すとともに、利下げに対して慎重な発言を行った。

　パウエル議長率いるFRBは昨年後半に3回の利下げを行ったが、今年になってからトランプ大統領の政策の影響を見極めるため利下げを停止していた。追加利下げを行わないパウエル議長に大統領は以前から不満を示していたのだが、17日の講演後にさらに不満がたかまり何度もパウエル議長を批判した。

　そして「自分がその気になればパウエル議長を解任できる」と述べて、解任する強い意志を示していた。

　現実問題として、現在のアメリカの法律下では大統領にFRBの議長を解任する権限はない。だがトランプ大統領は連邦最高裁で、高官2人を解任する権限を大統領に与える申請を行っている。これが認められると次はパウエル議長の解任権限を申請すると見られている。

　今のところ可能性は低いが、本当にパウエル議長が解任されたら、そのショックで金融市場に大変動が起こる可能性がある。まずはFRBの議長が大統領によって解任されたことで、アメリカの中央銀行の独立性に疑問が持たれる。そのため今後の金融政策に不透明さが広がり、NY株式市場は売りが広がり暴落することもありえる。

　また同時に米ドルに対する信頼も失墜する。4月になってトランプ大統領の相互関税、さらにパウエル議長の解任懸念と立て続けに米ドル売り材料が出て、22日にはついに1ドル＝140円を割って139円台をつけた。

　パウエル議長が本当に解任されればアメリカの金融政策に対する不透明性が大きく高まり、米ドルが多く売られることになるだろう。またトランプ大統領が指名する次期議長は利下げに積極的な人物であると予想されるため、それもまた米ドル売り材料となる。

　一方解任によって逆に上がる可能性が高いのが金だ。金は太古から「永遠の価値物」として、他の金融資産に対する不安が高まった時に好んで買われてきた。また米ドルと反対に動くことが多いので、解任で米ドルが下がれば金は逆に上がる可能性が高い。

　どのような形にせよ、パウエル議長が解任されたらそれは金融市場にとって大変なショックとなる。投資家にとってはそうならないと願いたいものだが、トランプ大統領の解任への意欲を見る限り絶対ないとは言い切れない。