ソフトバンクGがアリババ株をほぼ全て放出

ソフトバンクグループの財務基盤として不可欠だった中国のIT大手・アリババ株だが、ソフトバンクGは昨年から今年にかけて立て続けに売却。今後確定している売却が終わると、残るアリババ株は全体のわずか3.8％になるとの報道が流れた。両社の長年の関係が解消される時が来ようとしている。

昨年は数兆円分を放出

　ソフトバンクグループ（銘柄コード：9984）はすでに投資事業が基幹事業になっている。そして同社や孫正義氏の投資の最大の成功例としてよく語られるのが、中国のIT大手・アリババ（銘柄コード：BABA）への投資だった。

　孫氏とソフトバンクGが投資したアリババは上場に成功して世界最大級のIT企業になり、数兆円分のリターンを得られた。

　アリババの成功によって投資家としての孫氏の名声は高まり、その名声を背景に2017年にはソフトバンク・ビジョン・ファンド（以下、「SVF」）と呼ばれるファンドを立ち上げ、その後は同ファンドの第2弾も立ち上げた。

　SVFは当初順調に利益を出していたものの、2022年頃から米FRBの利上げの影響で世界の株式市場が下げに転じると業績は悪化。最近では巨額赤字になっている。

　しかし巨額赤字が出ても、ソフトバンクGにはアリババ株がある点が強みだ。財務改善のために2022年にソフトバンクGはアリババ株を大量に売買し、1年間で290億ドル（約3兆8500億円）もの資金を調達した。

　そして2023年明けからこれまでに、アリババ株の先渡売買契約を新たに72億ドル（約9,600億円）分締結した。今後はこの先渡売買契約に基づき、昨年末時点でまだ保有していたアリババ株の大部分を放出。最終的には保有比率は3.8％まで下がるという。

　ソフトバンクGが投資して以来、これまで同社は常にアリババの数十％を保有してきた。だが去年から今年にかけての大量売却で、ついに保有比率は3.8％にまで下がる。これまで続いてきた両社の強い関係はこれで一旦終了と言ってもいい。そして今後はこれ以上アリババ株を売って資金を調達することは難しくなった。

　ではソフトバンクGはもう巨額資金調達ができない状況に追い込まれたかというと、そんなことはない。同社が2016年に320億ドル（約4兆2500億円）で買収したイギリスの半導体設計企業のアームが、今年になって上場できる見通しになったからだ。

　アームの上場は数ヶ月前から申請されてきたが、今週になって「間もなくNASDAQと上場で合意」との報道が流れた。おそらくこのまま合意になり、今年中には上場できるだろう。そうなると保有するアーム株の価値が上がり、今後資金を調達したい場合アーム株を売却して行う手段ができる。

　アリババ株はほぼ全て手放したとはいえ、ソフトバンクGの経営はまだ揺らいではいないようだ。