イギリスのEU離脱が完了

イギリスは今年1月1日をもってEUから完全離脱した。2016年6月に国民投票で離脱を決定してから、離脱日が3度延期されるなど紆余曲折があった。しかし最終的には大きな混乱なく完全離脱となり、これからイギリスとEUは新たな関係の時代に入る。

ポンドのレートも大きく動かず

　イギリスが国民投票で歴史的なEU離脱を決めたのは、2016年6月のことだった。その前年・2015年には中東などから難民が大量に欧州に押し寄せ、「難民危機」と言われた。難民危機が全てではないにしても、イギリス国民が投票で離脱を選択した大きな理由の1つは難民危機であったと思われる。

　投票で離脱が決まった後、当初は離脱日が2019年3月29日とされた。しかしEUと貿易問題など重要な問題について合意ができず、4月12日に延期。短期間の延期ではやはり合意できずに、さらに同年10月末まで2回目の延期が決定した。

　その後前メイ首相は離脱問題の混乱の責任を取る形で辞任し、現ジョンソン首相が就任。だがジョンソン首相でも10月末までに離脱の諸問題を解決できず、2020年1月末まで3回目の延期となった。

　そして2020年1月末にはついに離脱したが、これは完全な離脱ではなく同年末までの11ヶ月間を「移行期間」と定め、その間に未解決の問題を協議する不完全な離脱であった。その後2020年末の完全離脱が近付いてもなかなか諸問題で合意ができず「合意なき離脱」の懸念が高まったが、12月下旬になってようやく英EUが合意。イギリスのEUからの完全離脱は、国民投票から4年半を経て問題なく完了した。

　国民投票当時から2019年の最初の離脱日頃まで、ポンドのレートがEU離脱問題に大きく影響されることが多かった。だが2020年になるともう市場も慣れたのか、離脱問題で何らかの報道があってもポンドはあまり動かなくなった。

　2020年を通して見ても、ポンドは130～140円の比較的狭いレンジに留まったままだった。2～3月の株式市場大暴落時には130円を一時割ったが、その後はすぐに130円台に戻り4月以降は落ち着いた値動きだった。

　今後しばらくはポンドが大きく動く材料はあまりないと思われる。EUからの完全離脱を達成し、これからイギリスとEUは新たな関係の時代に入る。

　イギリスがEUを問題なく離脱すると、他国で離脱を希望する国もイギリスに続く「離脱ドミノ」の発生を懸念する声もあった。だが実際にはイギリス以外に離脱を希望する国は出てきておらず、そのような懸念は杞憂であった。

　ただしイギリス内部にも火種はある。スコットランドなどイングランド以外の地域は、国民投票でも残留派が多かった。そのためスコットランドはイギリスから離脱し、独自にEUに再加入するべきだと主張する声もある。スコットランドは2014年9月にイギリスからの離脱を問う住民投票が行われたが、この時は僅差で残留派が勝利した。

　ともかくイギリスはEUから問題なく離脱した。もともとユーロを導入していなかったイギリスなので、これからはEUとは完全に別の道を歩むことになる。