ついに原油増産を求め始めたアメリカ

原油高によるガソリン価格の上昇には多くの国が悩まされており、日本やアメリカも例外ではない。高騰するガソリンで庶民の暮らしが圧迫されているため、11日になってついにアメリカも産油国に対して増産を求める声明を出した。

米では昨年秋の約1.5倍

　今年に入ってから世界経済の回復期待が高まっており、同時に原油需要の回復観測も高まっている。原油需要の回復観測と各国中銀が行っている大規模緩和によって、原油価格も上昇し7月には一時的に2018年の高値を上回る77ドルをつけた。

　原油高は必然的に各国でガソリン価格の上昇につながっている。日本でも今年はガソリン価格の上昇が続いており、7月後半には全国平均でリッターあたり158円を超えた。

　そして産油国で日本よりガソリン価格が安いはずのアメリカでも高騰し、今年7月の数字だと1ガロン（≒3.78リッター）＝3.2ドルとなっている。日本と比較するためにリッターあたりにすると約85セント（約93.5円）なので、日本のガソリン価格と比べると3分の2未満とまだまだ安く見える。

　とはいえ昨年秋には1ガロンが約2.2ドルだったので、すでに1.5倍近く上昇した。日本以上の車社会であるアメリカにとってガソリン価格の上昇は庶民の生活に直接的に影響する。

　そこで8月11日になって、アメリカ政府は「ガソリン高騰を放置すれば世界経済の回復に悪影響を与える」と述べ、産油国に対して原油をもっと増産するよう要求する声明を出した。

　高騰するガソリン価格を黙って見ていられずついにアメリカも動いたわけだが、昨年に産油国をまとめて大幅減産を実行させたのはアメリカだ。昨年春にパンデミックが世界に拡がると、原油需要が急減し原油価格も急降下。4月に一時マイナス40ドルをつけるという珍現象も起こった。

　原油価格の急落を見て当時のトランプ大統領は動き、産油国をまとめて日量1,000万バレルという大幅減産を行うことで合意させた。これがその後の原油価格回復のきっかけの1つとなった。

　しかしそのアメリカが今後は産油国に対して増産を要求している。産油国がこの要求をどこまで飲むかはまだわからないが、アメリカが最近の原油とガソリン高騰に対して警戒心を強めていることは明らかになった。

　ガソリン価格が高騰し日本でも「ガソリン代がかかって生活が圧迫されている」という声が増えているが、アメリカがガソリン価格抑制に動き始めた以上今後は上昇が抑えられるかもしれない。