いまだに続くマウントゴックスの倒産処理

仮想通貨が世界的に普及する前、2014年に倒産したマウントゴックスという日本の仮想通貨取引所があった。この倒産はその後仮想通貨価格が大きく変動したことなどから後処理が長引き、8年以上経った現在になっても終わっていない。

破産から民事再生に変更

　仮想通貨が最初に世界的なブームになって一気に普及が進んだのは2017年。そして2回目は2021年だった。現在では仮想通貨はすっかり世界金融システムの一部になった感がある。

　しかし最初の仮想通貨であるビットコインは2009年頃から流通が始まったと言われるので、ブーム時以前から仮想通貨や取引所は存在していた。

　2009年に設立され、2010年代前半に日本で最も取引量が多かった取引所にマウントゴックスがある。当時はビットコイン以外の仮想通貨はほとんど流通していなかったので、仮想通貨取引所というよりビットコイン取引所として営業していた。

　ところが2014年2月に、マウントゴックスはハッキングされてビットコインが80万枚も流出してしまった。そしてこの当時はビットコイン価格がまだ5万円程度だったので、被害総額は約400億円だった。

　この事件やそれ以前のハッキング事件の被害などのため、マウントゴックスは2014年2月中に民事再生法の適用を申請し、事実上倒産した。ところが同社は民事再生法適用の条件を満たしていないため、2ヶ月後の4月には民事再生ではなく破産手続きに移行することになった。

　その後破産手続きが進められることになったのだが、3年後の2017年に仮想通貨ブームが起こり、ビットコインの価格が暴騰する。マウントゴックスは倒産後も14万枚のビットコインを保有していたため、ここで債権者たちが「債権者に配当を与えるに十分な資産があるので破産ではなく民事再生にするべきだ」と主張。2018年6月には破産から民事再生手続きに戻されることになった。

　マウントゴックスの元CEOでフランス人のマルク・カルプレス氏は、2019年3月に東京地裁において、私電磁的記録不正作出・同供用罪で懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決が言い渡された。この罪は、自社の取引システムで口座残高を水増ししていたもの。2020年12月には再生計画案も提出した。

　そして先週8月31日に、マウントゴックスの再生債権を9月15日から無期限で譲渡禁止とすることが発表された。再生債権とは、民事再生などが行われた場合に、再生前から存在していた債権のこと。そして譲渡禁止は弁済の混乱を防ぐ目的で課される。

　つまり倒産してから8年半ほど経った現在になっても、倒産の後処理は終わっていないことになる。マウントゴックスの場合は保有するビットコインが暴騰して、途中で破産から民事再生に戻されたという特殊な事情があるが、とにかく長い後処理になっている。

　また2022年9月現在のビットコイン価格を300万円とすると、マウントゴックスが保有する14万枚の価値は約4,200億円になる。倒産当時と比べてあまりに価値が上がったので、債権者は当時の債権額より多くの弁済を受けられる可能性もあるという。

　後処理の期間といい債権者へ返済される金額といい、ここ数年のビットコインの暴騰のためいろいろ常識外れな倒産処理になっている。