SECのXアカウントハックでBTC乱高下

ビットコインETFの承認間近に沸く仮想通貨市場で、10日早朝に米SECのXアカウントがハックされ偽情報が発信されたことでビットコイン価格が乱高下する一幕があった。この乱高下で大量のロスカットが発生したと見られており、ネット上の偽情報のリスクが改めて浮き彫りになった。

一時は690万円近くまで上昇

　アメリカではビットコインETFの承認が間近に迫っており、早ければ今週中にも承認されると見られている。しかし間もなく承認されるというこのタイミングで、悪質な事件が起こった。

　ビットコインETFの承認を決定するのは証券当局のSEC（証券取引委員会）。そして10日午前6時過ぎにSECのX（Twitter）アカウントから、「ビットコインETFの承認が決定された」とのメッセージが流れた。

　今週中にも承認されると見られていたこのタイミングでそのようなメッセージが公式アカウントから流れたため、多くの仮想通貨投資家が「ETFが承認された」ことを確信。それまで675万円付近で推移していたビットコイン価格は、ETF承認の報道に沸いて690万円近くまで急騰した。

　しかしこのXメッセージは本物ではなかった。正確に言うと間違いなくSECの公式Xアカウントから発信されたものだったのだが、SECが発信したものではなく何者かにハッキングされて発信された偽のメッセージであった。

　そのためメッセージ発信の数分後には、SECの責任者であるゲンスラー委員長が自身のXアカウントで、「SECのアカウントがハッキングされた。SECはまだETFを承認してはいない」と発信した。

　このメッセージを受けて市場は最初のメッセージがフェイクであることを理解し、今後はビットコインが650万円付近まで急落した。その後は多少反発して10日午前中から午後にかけて主に660万円台に留まった。

　この乱高下のためにビットコインのポジションで多くのロスカットが発生したと見られている。仮想通貨にも証拠金を差し入れてレバレッジをかけて行う取引があり、日本の取引所では「仮想通貨FX」などという商品名で提供しているところもある。そのような証拠金取引のポジションが、10日早朝の乱高下で多数ロスカットされた。その合計額は日本円で100億円以上だったのではないかとの見通しも出ている。

　インターネット時代になってネットで多量の情報が出回るようになったが、その中には偽の情報も多い。そして中には金融市場を動かしてしまう偽情報もある。11月には「米でリップルのETFが申請された」との偽情報が出回り、リップルのレートが乱高下した事件もあった。

　このような偽情報には振り回されないようにしたいが、新しい情報に瞬時に反応して取引を行うシステムトレードなどが広く実施されており避けることは難しいかもしれない。