DMMビットコインから仮想通貨大規模流出

2018年1月に発生したコインチェックのネム大量流出事件は日本の仮想通貨業界を震撼させたが、その後規制が厳しくなったこともありここしばらくは大規模な流出事件は聞かなくなった。しかし先週にDMMビットコインで約482億円分のビットコインが不正に流出した事件が発生。仮想通貨のハッカーとの争いは終わりがない。

被害総額は過去最大級

　先週金曜になり、国内の大手仮想通貨取引所の1つであるDMMビットコインがビットコイン約482億円分が不正に流出したことを発表した。DMMの発表によると流出を検知したのは31日の午後1時26分であり、正確にいつ流出したのかは発表されていない。31日当時のビットコインのレートは約1,070万円であり、そのレートで換算すると482億円は約4,500枚分にあたる。

　日本ではこれまでに何度もハッキングによる仮想通貨流出事件が起こってきた。最も大きく報じられたのは、2018年1月に発生したコインチェックにおけるネムの流出事件である。この事件では被害額が600億円近くと日本の仮想通貨史上最大であるのに加え、2017年後半に仮想通貨が大ブームになりその最中の事件であった。

　当時は多くのメディアが仮想通貨について報じるようになり仮想通貨に対する関心と期待が急激に高まった。そのような中で突然コインチェックの事件が起こり、国民は仮想通貨のリスクを突き付けられた。

　だがこの事件をきっかけにして、政府はそれまで整備されていなかった仮想通貨業界の法規制の本格的な整備を開始。仮想通貨取引所を登録制にすると同時に、仮想通貨取引所に流出が起こった場合補填できる資産の保有を義務付けるなど消費者保護を強化した。

　このような措置もあり、コインチェックの事件後に発生した流出事件はだんだんと被害額が減っていった。またここ1～2年は大規模な流出事件は日本でほとんど聞かれなくなった。

　しかし5月31日には、またも数百億円規模の大規模流出事件が発生してしまった。ただしDMMは仮想通貨事業以外に、オンライン英会話やDVDレンタルなど多彩な事業を行っている大企業だ。上場はしていないもののその公正価値が1,000億円を超える「ユニコーン企業」に該当すると言われたこともある。

　したがってグループ企業に支援してもらうことも可能であり、31日の発表では「お客様に損失を全額保証する」と述べていた。DMMは大企業グループなので482億円の補填は不可能ではないと思われるが、それでも大打撃になるだろう。6月2日にはDMMビットコインがいくつかのキャンペーンの中止を発表した。この中止は流出事件が原因とは明示されていないが、事件が中止の1つの原因であるかもしれない。

　またコインチェックの事件よりさらに4年ほど前、2014年春には当時日本最大の取引所だったマウントゴックスがハッキングされ、数百億円分のビットコインが流出してそのまま倒産した。マウントゴックスにはビットコインがかなり残っており、その関係で破産関連の手続きが最近まで10年も続いている。

　各国や各取引所はハッキング防止に全力を注いでいるのは間違いないが、それでもハッカーは壁を破って仮想通貨を盗む。取引所とハッカーのイタチごっこは今後も続くだろう。