3度目の仮想通貨ブームはあるのか

2021年の仮想通貨バブルは翌22年に弾けて市場は暴落し、2023年が明けても仮想通貨の地合は回復する見通しがない。これまで2回あった世界的な仮想通貨ブームだが、果たして3度目はありえるのだろうか。

2度目は緩和など特殊な背景

　2021年は世界各国の膨大な金融緩和を背景に、株式だけではなく仮想通貨市場も高騰した1年だった。しかし同時に世界的にインフレが進行したために2022年になると各国は急いで緩和を止めて引き締めに転換し、仮想通貨のバブルは崩壊した。

　2022年は5月のテラショックや11月のFTX破綻といった特定の仮想通貨ビジネスの破綻もあり、仮想通貨市場は1年を通して下落した。そして2023年が明けたが、仮想通貨市場の回復は見えない。

　2021年は仮想通貨ブームとしては2回目だった。1回目は2017～18年で、この年になって突然仮想通貨市場は高騰し17年12月にはビットコインが230万円と1年前の約10倍になった。また仮想通貨自体の知名度も上がり、前2016年まではほとんど知られておらず取引もなかったイーサリアムなど他の仮想通貨の取引量が激増した。

　そして2021年が2度目となり、この年は企業・機関も多く仮想通貨市場に参入。ビットコイン価格は前回を大きく上回る780万円まで上昇した。

　だがその後は金融緩和から引き締めへの転換を受け、仮想通貨バブルは弾けた。果たして3度目のブームはあるのだろうか？

　仮想通貨自体は今後長期にわたって世界に残ると思われるので、今後数年だけではなく数十年の長期で考えれば、次のブームが起こってもまったく不思議ではない。ただし2021年の場合はパンデミック開始に伴う世界各国の膨大な金融緩和という特殊な背景があった。

　2021年と同レベルのブームになるためには、また同レベルの緩和が必要になる。現在世界ではインフレ抑制のため引き締めが行われており、2021年のような緩和は当面行われない。2020～21年はパンデミック開始という特殊な状況でもあったため、同じ状況にならない限り今後何十年もあれだけの規模の緩和はないかもしれない。

　そして世界は2022年のバブル崩壊でかなり痛い目を見ている。2017～18年当時は個人の参加が多く企業は少なかったため、損失を出したのは個人だけだった。だが2021年のブームは企業・機関の参加が増えたので、その後のバブル崩壊で企業レベルで損失が出た。カナダの年金基金は、レンディング企業・セルシウスの破綻で損失となった。

　2022年のバブル崩壊で損失の出た企業・機関、あるいはそのような現実を見た企業は、今後仮想通貨投資には積極的になれないだろう。そしてFTX破綻などによって仮想通貨業界の信頼も低下した。世界各国はFTX破綻後仮想通貨業界に対する規制強化に動いている。この状況では仮想通貨市場で3度目のブームがあるとしても、近い将来ではない相当先になるのではないか。