英でサトシ・ナカモトを巡る裁判

ビットコインの発明者と言われる人物「サトシ・ナカモト」は、ビットコインがこれだけ普及しても正体不明のまま残っている。しかし「我こそはサトシ・ナカモト」と主張する人物がおり、それを否定するビットコイン関連団体との裁判が今月始まった。

ハンガリーの首都には像も

　ビットコインが世界に登場してから15年以上たち、今では金融資産の一種として世界の多くの人が保有するほど普及した。またビットコインの理論を基にしてイーサリアムなど他の通貨も開発され、すでに無数の仮想通貨が存在している。

　いわばビットコインを発明した人物は世界を大きく変えたわけだが、その正体は未だにわかっていない。ビットコインを発明したのは「サトシ・ナカモト」と呼ばれる人物と言われる。

　サトシ・ナカモトは2008年にインターネット上でビットコインの基盤となるブロックチェーンなどの論文を公表した。それを基に世界最初の仮想通貨であるビットコインが2009年頃から流通開始。

　当初は仮想通貨と言えばほぼビットコインのみだったが、2017年の最初の仮想通貨ブームによってイーサリアムなど他の多くの仮想通貨が台頭した。またすでにIEOという形で企業が独自のトークン（仮想通貨）を発行することも珍しくなくなった。

　ところが世界を大きく変えた人物「サトシ・ナカモト」は2010年代前半には論文も発表しなくなり、そのままフェードアウトして表舞台から消えてしまった。そしてそれから10年ほど経った今も、この人物の正体はわかっていない。

サトシ・ナカモトの名前は日本人名だが、論文は日本語ではないので日本人である可能性は低い。また正体が一切不明であるのだが、ハンガリーの首都・ブダペストには彼の像が建っている。そのためネット上で「サトシ・ナカモト」を表わす画像を出す場合、この像の画像が使われることが多い。

　これまでサトシ・ナカモトではないかと推測される人物が何名かいた。その1人であるアメリカ人プログラマーのハル・フィニー氏は、世界で最初にサトシ・ナカモトとの間でビットコイン取引を行った人物。しかしフィニー氏は2014年に死亡したため、フィニー氏がサトシ・ナカモトだったとしてもその証明は難しくなった。

　そして「我こそはサトシ・ナカモトである」と強く主張する人物が1人いる。それはオーストラリア人のコンピューター科学者・クレイグ・ライト氏。ライト氏は自分こそがサトシ・ナカモトであるという主張に基づき、これまでビットコイン関連の知的財産権など権利を主張してきた。

　だがビットコインの関連団体はライト氏をサトシ・ナカモトであると認めておらず、そのような動きを黙認していなかった。ビットコイン関連団体の「暗号資産オープン特許同盟（COPA）」は、「ライト氏はサトシ・ナカモトではない」と主張してイギリスでライト氏を提訴した。

　この提訴によって、裁判所から正式に「ライト氏はサトシ・ナカモトではない」と認定してもらい、以後はライト氏にそのような主張を止めさせることを目的としている。この裁判は今月から始まっているが、ライト氏側が敗訴すれば彼の「我こそはサトシ・ナカモトである」との主張には大きなダメージとなる。逆にライト氏が勝訴したとしても、それだけで彼がサトシ・ナカモトであると証明するものではない。

　この裁判の結果はまだ先だが、サトシ・ナカモトの正体が100％確定することは当面なさそうだ。