米FTXが間もなく預かり資産の弁済を開始へ

著者鳥羽賢

2024年7月18日

2022年11月に破綻して仮想通貨業界を震撼させた米取引所のFTXは、その後預かり資産の投資家への弁済がなかなか行われなかった。しかし近い将来に弁済が始まりそうになっており、投資家としてはようやく安心できそうになってきた。

一部の投資家から異議も…

　かつては世界最大級の仮想通貨取引所だったアメリカのFTXは、2022年11月に突然破綻して世界の仮想通貨業界を震撼させた。

　破綻した原因は投資家からの預かり資産をグループ企業の事業に充てていたため。そして破綻直前に入った投資家からの多くの出金依頼に対処できず倒産となった。預かり資産をグループ企業の事業に充てていたこともあり、その後現在まで2年近く投資家は資産を返してもらえない状況が続いていた。

　FTXは破綻当時日本法人も持っていたが、日本には厳しい規制がありFTXも対象となっていたので顧客の資産は守られており、比較的早い時期に出金を再開することができた。

　一方アメリカのFTXはなかなか倒産手続きが進まないまま1年半以上の時間が経ったのだが、6月末になって開催された裁判所の審理でようやく弁済の目途が立ってきた。

　この手続きは弁済に関して関係者の承認を得るためのもの。だが開催に先立って一部の投資家から異議が出ていた。FTXの案としては現金で弁済するつもりであり、かつ破綻当時の2022年11月から弁済時までの利子もつけて、破綻当時の預かり資産額の119％を支払うという案だった。

　普通に考えれば破綻時の金額に利子までつけて返済してもらえればそれで十分だろう。だがFTXの場合は預けていた資産が仮想通貨なので話が異なる。破綻した当時のビットコインのレートは250万円前後だったが、その後2023年から24年にかけて仮想通貨レートが大きく上昇して現在では約1,000万円となっている。

　つまり例えばビットコインホルダーにとっては、FTXが破綻せずそのままビットコインを預けていたら現在まで約4倍になっていたことになる。これでは現金で弁済されても実質的には損をしているようなものなので、一部の投資家が「仮想通貨で弁済されるべき」の異議を唱えていた。

　だがこの異議は認められず、結局現金で弁済されることが決まった。今後もまだ手続きはあるためにすぐに弁済が始まるわけではないが、今後手続きが進められ今年中にも弁済が始まる見通しが出てきた。

　これでFTXに資産を預けていた投資家にとっては一安心だが、仮想通貨ではなく現金でという点に不満を持つ債権者もいるかもしれない。その点、2014年に破綻して最近ようやく弁済が始まったマウントゴックスの場合はビットコイン等で支払われ、ビットコインを保有していた投資家にとっては多大な利益が出たことになる。同じ仮想通貨取引所の破綻でもかなり明暗が分かれたと言えるかもしれない。

この書類に含まれる素材はiFOREXではなく、独立した第3機関により作成されたもので、いかなる場合においても、直接的・間接的、明示的・暗示的にかかわらず、投資に対する助言や、金融商品に関する投資戦略の推奨、提案として解釈すべきものではありません。この書類に含まれる過去の実績や、それに基づくシミュレーションは将来の成果を保障するものではありません。
すべての免責事項はこちらをクリックしてご確認ください。