米のインフラ法案は仮想通貨業界に多大な影響

米で今後の景気対策としての大規模インフラ整備を行う法案の審議が続いている。しかしこの法案には財源として仮想通貨業界からの課税を強化する内容が盛り込まれているため、仮想通貨業界に影響が大きく業界は必死に法案の内容修正を要請している。

適用範囲の広さが問題

　アメリカでは景気対策として今後長期をかけてインフラ整備を行う法案の審議が続いている。金額的には1兆ドル（約110兆円）以上になるため、財源確保をどうするか民主・共和党で議論が続けられている。

　しかしこの法案には、財源にするために仮想通貨業界に対する課税を強化する内容も盛り込まれている。それが仮想通貨業界にとって影響が大きいため、仮想通貨業界はこの法案の内容をできるだけ有利なものに修正させようと必死に動いている。

　米議員によると、今回の内容によって今後10年間で仮想通貨業界から280億ドル（約3兆円）の追加税収が得られるという。

　法案の仮想通貨業界課税に関する内容は主に以下のようなものだ。現在仮想通貨取引所は、証券会社のように顧客による取引の詳細情報を税務当局に報告する義務を負っていない。それを変更し、今後は顧客の詳細な取引情報を報告する義務を課す。

　また米ドルで1万ドル相当以上の仮想通貨の送金があった場合、送金者や送金先などの詳細情報を報告する義務を課す。とはいえこのような規制はすでに7月にEUでも導入されることが発表されており、マネーロンダリングやテロ資金供与を防止するために世界各国で導入が進んでいる。

　問題は今回の適用範囲が当初非常に広範囲だったことだ。仮想通貨取引所だけに限らず、マイナー、ウォレットサービス、開発者など仮想通貨を扱うあらゆる企業が含まれていた。

　仮想通貨業界への課税強化が判明したのは先月末だが、仮想通貨業界はすぐに反発したために直後に最初の修正案が提出された。この案ではDEX（分散型取引所）は、法案の適用範囲外とされた。

　だが仮想通貨業界はそれでも満足せず、さらなる修正を議員に訴えた。その結果8月5日には2つ目の修正案として、マイナーやウォレットサービスの提供企業が適用範囲外とされた。また開発者については、開発したもののユーザーが「顧客」に該当しない場合は適用範囲外となった。

　このように物議を醸しているインフラ法案だが、この法案は今週末の7日に上院で採決が行われる。2回修正されたとはいえ一般的な仮想通貨取引所は課税が強化される点は変更されておらず、仮想通貨業界にとっては影響と負担が非常に大きい法案であることは変わっていない。