登場するタイミングが悪かった!?仮想通貨

今月になってインターネットコンピューターという仮想通貨が発表され、海外のいくつかの取引所で上場された。しかし直後に仮想通貨市場が大暴落したため、上場から2週間経った今でも上場時の値を下回る動きが続いている。

10日に海外で上場

　5月になってインターネットコンピューター（ICP）という新しい仮想通貨が発表された。スイスにあるDfinity Foundation（ディフィニティ・ファンデーション）というNPOが、2008年から同名の分散型ネットワークの構築を進めてきた。

　そして5月7日についにインターネットコンピューターのネットワークが発表され、同時にネットワークで使える仮想通貨としてのICPも立ち上げられた。このように同名のネットワークがありそこで使える通貨としての仮想通貨が開発されたので、性質的にイーサリアムに近いと言える。

ICPは中国発の大手仮想通貨取引所・バイナンスで5月10日に上場。またアメリカの大手仮想通貨取引所・コインベースでも、ほぼ同時期に上場された。5月24日現在で日本の仮想通貨取引所では扱われていない。

　ICPは上場前から知名度もあったので上場初日からかなり買われ、翌11日には日本円にして1枚あたり4万5000円を超える値段がついた。そして時価総額も日本円で5兆円ほどになり、時価総額ベースでの仮想通貨ランキング10位以内にも入った。

　ところが上場時の期待買いが多過ぎたのか、12日以降ICPの価格は下落が続く。そして5月19日には仮想通貨市場の大暴落があり、この時は高値から4分の1以下の1万円付近まで落ちてしまった。その後は多少の反発があり、22～24日にかけて1万5000～7000円のレンジで推移している。

　しかし上場直後の高値にはほど遠く、上場直後に飛びついて買った投資家達は全て含み損を抱えている状態だ。今後仮想通貨市場がどう動くか予想することは難しいが、現在バブル崩壊のような動きになっており、下手をしたら今後数年は崩壊前の価格に戻らない可能性がある。

　そうなるとICPを上場直後に買った投資家達は、塩漬けにするか損切りをするかしかない。これはまさに上場のタイミングが悪かったということになる。ビットコインの最高値は4月だったが、イーサリアムは5月12日に最高値をつけ、バイナンスコインは5月10日に最高値をつけた。ICPはちょうど仮想通貨市場が最も高い時に上場をした。

　このようにバブルの頂点で上場し、その後暴落して上場時の価格に戻らなかったという例は株でもある。その典型的な銘柄はe-まちタウン（銘柄コード：4747）だ。この企業はIT企業だったが、クレイフィッシュという社名でITバブルの頂点だった2000年3月に上場。

　上場初値はなんと約2,500万円にもなり、その直後に約3,500万円まで上昇してITバブル銘柄の代表的なものとなった。ところがその後すぐにITバブルが弾け、株価は100万円を割るほど大暴落。

　2006年にはe-まちタウンと名前を変えたが、結局光通信の完全子会社となったために2012年に上場廃止。廃止時までに上場直後の高値を回復したことはなかった。

　仮想通貨のICPは今回の仮想通貨バブルの頂点で上場したので、e-まちタウンのような例になりかねない。もちろん今後仮想通貨価格がまた高騰する可能性は残っているので、絶対戻らないとは言い切れないが、なんともタイミングの良くない上場であった。