今週の金融市場の動き総括、11月27～12月1日

今週は米10月個人消費のPCEデフレーターが発表され予想通りだったが前月より低く、米のインフレはかなり沈静化したことが明らかになった。またFRBのパウエル議長の講演では利上げの終了が示唆されこちらも株式市場の買い材料となり、NY株式市場は堅調な1週間で終わりダウは今年の最高値を更新した。

ダウは36,000ドル超え

　今週は重要な経済指標がいくつか発表された。その中でも最も注目されていたのは、30日木曜夜に発表されたアメリカの10月個人消費のPCEデフレーターで、発表は予想通りの前年同月比＋3.0％だった。予想通りとはいえ前月が＋3.4％だったので、アメリカのインフレがすでにかなり落ち着いたことがわかった。

　それ以外の主な指標をまとめると、29日水曜に発表されたアメリカの第3四半期GDPは予想の前期比年率5.0％増より0.2ポイント高い5.2％増だった。30日に発表されたユーロ圏の11月消費者物価指数が予想が前年同月比＋2.7％、結果が＋2.4％で、前月の＋2.9％より大きく下がりアメリカと同様インフレの落ち着きが明らかになった。

　そして同じ日に発表されたカナダの第3四半期GDPは、予想の前期比年率0.2％増に対し発表は1.1％減で予想に反してマイナス成長だった。

　政策金利の発表は多くなかったが、29日にはニュージーランドが発表して予想通り5.5％のまま据え置き、30日には韓国が発表してこちらも3.5％のまま据え置きだった。

　そしてもう1つ今週の市場にとって重要な材料として、今週終了間際の2日土曜未明に行われたFRBパウエル議長の講演があった。議長は講演の前半では「利下げ時期の憶測は時期尚早」「適切であれば追加引き締めを用意する」とタカ派の発言をしたものの、その後「政策は深く景気抑制の域に入った」との発言が利上げ終了を示唆したものと受け止められこれが米利上げの終了見通しをさらに高めることとなった。

　米利上げの終了見通しが高まったことで、NY株式市場は先週に続いて堅調な1週間となった。ダウ工業平均は27日月曜には小幅下落したものの、28～29日と小幅高。そして米10月個人消費のPCEデフレーターが発表された30日には米利上げの終了見通しを受けて520ドルも暴騰して今年の最高値を更新。

　パウエル議長の講演があった1日には294ドル続伸し、今年の最高値を連日更新するとともに2022年1月以来となる36,000ドルを突破した。

　その一方で米利上げの終了見通しによって為替が円高に動いたことで、東京株式市場はパッとしない1週間だった。日経225平均は週明け27日に178円下げて終わり、その後4日間は33,100～500円付近で停滞。ただし29・30日と一時33,100円台まで下げても引けまでに反発する展開で大幅安にはならず、週足では194円安だった。

　為替市場では米ドル/円が大きく円高・米ドル安に動いた。週明けは1ドル＝149円50銭付近から始まったが、週前半に円高が進行して29日には9月以来となる146円台をつけた。その後30日の米インフレ指標は予想通りだったため発表後に148円50銭を回復したが、2日未明のパウエル議長の発言でまた円高に動いて週の終値も146円台だった。

　また先物市場では75ドル付近から週をスタートしたNY原油が、30日に行われる会合で減産が発表されるとの期待からその後上昇して会合までに79ドルに。ところが発表された減産幅は市場の期待より小さく、発表後に4ドルも下落。週の終了間際にまた一段下げて終値は74ドル台だった。

　来週はアメリカの11月ADP雇用統計と11月雇用統計が発表され、カナダ、オーストラリア、ポーランド、インドの政策金利発表もある。特に売り材料がなければ、NY株式市場の上昇は来週も続く可能性が高い。