中国の恒大集団に対し清算命令が出る

2021年からずっと経営危機が続いてきた中国の不動産大手・恒大集団に対し、29日に香港の裁判所が清算命令を出した。これで恒大集団が完全に終わったというわけではないが、恒大集団は一段と厳しい状況に追い込まれる。

恒大の資産の大半は本土にある

　2021年から経営危機に陥っていた中国の不動産大手・恒大集団が、29日になって香港の裁判所から清算命令を受けた。

　ここに至るまでには長い経緯がある。恒大集団は1996年に中国で創業した不動産ディベロッパーで、不動産開発を中心とした中国経済の成長に乗って急成長し中国有数の企業になった。またミネラルウォーター、EV、プロサッカーチームの経営など他業種にも進出し、創業者の許家印（きょ・かいん）会長はアジアでトップクラスの富豪になった。

　しかし2020年代に入って中国政府が不動産価格を抑制する政策に転換したことで、恒大集団は一気に経営危機に陥った。経営危機は2021年夏に表面化しその後事実上のデフォルトにもなったが、表面化から2年半経過した2024年初頭になってもまだ企業として存続はできていた。

　ところが今週明け29日になって、香港の裁判所が恒大集団に対して清算命令を下した。ただしこの命令だけで、恒大集団の倒産を意味するわけではない。

　2022年6月に恒大集団に投資していたファンドである「トップ・シャイン・グローバル」が債権回収のために恒大集団の清算を申し立てたので、今回の清算命令はその申し立てを受けて下されたもの。

　ただし命令を出したのが香港の裁判所という点が、問題を複雑にしている。中国と香港はまだ「一国二制度」を続けており、香港の裁判所の命令が中国本土にも法的拘束力を及ぼすわけではない。

　そして恒大集団の資産の大半は香港以外、主に中国本土にあるので、香港の裁判所の命令だけでは清算手続きはスムーズに行かないと見られている。今後は中国の当局や裁判所などの協力が求められるが、動いてくれるかどうかは不透明な状況にある。

　この命令を受けて、29日の香港株式市場では恒大集団株が取引停止とされた。恒大集団株は中国と会社が成長している間は順調に値を伸ばし、ピークの2017年秋には一時30香港ドルをつけた。

　しかしその後は下落が続き、2021年9月に経営危機が表面化すると暴落。経営危機で決算数字が確定できなかったため、2022年3月には1.65香港ドルをつけたところで取引停止とされた。

　約1年半もの長い停止を経て2023年8月には再開されたが、再開後は0.2香港ドル台にまで暴落した。2023年9月末から10月初頭の数日間に、「許家印会長に対して強制捜査が行われた」との情報が流れ再度取引停止になったこともある。

　そして先週の終値は0.206香港ドルだったのだが、週明け29日は20％以上安い0.163香港ドルまで下がったところで取引停止とされた。これでここ2年で3回目の取引停止となる。

　恒大集団は昨年8月にアメリカで連邦破産法第15条の適用を申請した。これはよく報道される「事実上倒産」の第11条とは違い、海外債権者から米国内の資産を守るためのもの。

　恒大集団は、アメリカや香港で倒産かとも思われるような法的措置が次々に行われている。今回の清算命令で完全に終わったわけではないが、非常に厳しい経営状況にあるのは間違いない。