下げが続く仮想通貨市場の現状

昨年秋を天井に仮想通貨市場は軟調な展開が続いており、最近になってまた下げが目立っている。世界各国が金融緩和から引き締めに移行している現在、リスク回避の流れが拡大しているため仮想通貨市場からも資金が引き上げられていると見られる。

ビットコインは高値の半値未満

　世界で最初の仮想通貨ブームが起こったのは、2017～18年のことだった。2016年まで仮想通貨はまだ一部の人々が知っている程度のものだったが、2017年になって突如ビットコイン（BTC）を初め仮想通貨価格全般が暴騰。多くの人々が仮想通貨に群がり、仮想通貨の知名度は一気に高まった。しかしこの時は2018年が明けると仮想通貨価格は下落に転じ、ブームは終わった。

　そして2021年には第2次仮想通貨ブームと言える状況になった。だが今回は前回のように個人だけではなく多くの法人も仮想通貨を売買し、また多くの企業が仮想通貨の関連サービスを開始。エルサルバドルのようにビットコインを法定通貨化する国まで出てきた。

　価格も2017～18年のように天井をつけてすぐ下落はせず、2021年の間はかなりの高値に留まった。仮想通貨はもはや単なるブームを超えて生活に浸透したかに見えた。

　だが2022年になり、世界的な金融引き締めによるリスク回避の流れは仮想通貨市場にも及んでいる。もともと多くの仮想通貨が昨年春と秋に2回の天井をつけ、その後は高値更新が止まりやや軟調な展開が続いていた。そして今年4月以降になってまた下げが目立ってきている。

　円建てのレートを見てもかなり下がっているが、円安の影響のため米ドル建てだと円建て以上に下がっている。ビットコインとイーサリアム（ETH）の2大通貨は、米ドル建てだと昨年秋のピーク時の半分以下にまでなった。

　また最近は仮想通貨の時価総額ランキング（ステーブルコインは除く）で、リップル（XRP）が4位に復帰してきている。リップルは2017～18年の仮想通貨ブーム時は3位が定位置だったのだが、米当局による訴訟の影響もあり2021年は一時7位付近まで後退したこともあった。

　それがここにきて4位に戻ってきたのは、2021年に台頭してきたソラナ（SOL）、カルダノ（ADA）、テラ（LUNA）、ポルカドット（DOT）といった新興通貨の凋落が激しいためだ。例えばカルダノは米ドル建てで見ると、昨年夏につけた高値の4分の1未満にまで暴落している。ポルカドットは昨年秋につけた高値の5分の1にまでなった。

　上記の4通貨は2017～18年時はまだ流通していなかった、あるいはランキング上位にはいなかったが、2021年になって台頭してきた。しかしここ最近の下落はビットコイン、イーサリアム、リップルよりかなり大きい。

　一方現在3位にはバイナンスコイン（BNB）が残っている。バイナンスコインも2017～18年時はほぼ流通していなかった新興通貨だ。しかしバイナンスコインは、取引所のバイナンスが発行しているもの。そしてバイナンスはバイナンスコインのホルダーに手数料などの面で優遇措置を与えているため、バイナンスで取引をしたいなら持っておいた方が有利という実需が存在する。そのため他の新興通貨ほど大きく崩れていないと見られる。

　昨年末から今年5月にかけかなり下がった仮想通貨市場だが、世界的なリスク回避の流れが続くならまだ下がることも十分考えられる。