上場初日の10分の1になったコインベース株

米大手仮想通貨取引所のコインベースは、2021年4月に米NASDAQに上場。その時は仮想通貨取引所としては初の米国市場上場とあってかなり話題になった。しかし株価は上場初日につけた高値が天井となりその後は下げが続き、今月にはついに高値の10分の1未満にまでなってしまった。

初日は暴騰したが…

　2021年初頭頃から仮想通貨市場が高騰しており、各国の仮想通貨取引所の業績も大きく伸びている。そのような追い風を受けて米大手仮想通貨取引所のコインベース（銘柄コード：COIN）は、2021年4月14日に米NASDAQ市場に上場した。

　コインベースは2012年創業で、わずか9年で上場に成功。上場時に既存のIPO形式ではなく、直接上場を選択したことなどから話題を集めた。

　IPOの公募価格に相当する参考価格は250ドルだった。そして上場初値は参考価格より31％高い328.28ドルで、初日には参考価格比72％も高い429.54ドルまで高騰。少なくとも初日だけ見ればかなり順調と思われた。

　だがその後は初日の429.54ドルを超えたことは一度もなく、コインベース株はじりじりと値を下げていく。昨年9～11月には一時的に上昇し11月に368.90ドルをつけたものの、12月以降は再度下げが続いた。

　今年4月になると下落がさらに加速した。3月末時点でまだ200ドル弱だったのだが、4～5月にかけて大きく下げ、5月12日には40ドルと上場初日の高値から10分の1未満にまでなってしまった。

　それにしてもコインベースはどこが間違ってここまで暴落してしまったのだろうか？業績自体はそこまで悪くはない。コインベースは12月決算だが、2019年12月期の売上高は5億3000万ドル（約680億円）、20年12月期は12億8000万ドル（約1,640億円）、21年12月期は78億3000万ドル（約1兆円）と順調に伸びてきた。

　また損益も上場後は基本的に黒字が続いており、純利益は2019年12月期が3,000万ドル（約38億4000万円）の赤字だったが、20年12月期は3億2000万ドル（約410億円）の黒字に転換。21年12月期は36億ドル（約4,600億円）もの黒字だった。

　しかしコインベースの場合は上場したタイミングがやや悪かったと言えるかもしれない。上場した昨年4月は仮想通貨市場の高騰がほぼピークに達していた時期で、仮想通貨市場と取引所に対する期待が大きすぎた。

　ところが翌5月には仮想通貨市場が3度に分けて暴落。ここで一旦市場の上昇が止まり、その後はコインベースの業績や株価への期待がしぼんだ。仮想通貨市場は昨年秋に再度高騰したため、9～11月には株価も回復した。しかし12月以降仮想通貨市場は軟調な動きが続いているため、コインベース株も下げ続けた。

　そして5月12日の40ドルをつけるきっかけになったのは、10日に発表された2022年1～3月期の決算だ。その内容は、売上高が前年同期比27％減の11億7000万ドル（約1,500億円）、純損益は前年同期の7億7000万ドル（約1,000億円）の黒字から、4億3000万ドル（約550億円）の赤字に転落した。そして月間取引ユーザー数も、前期から20％減の920万人だった。

　5月10日は72.99ドルで終えたコインベース株は、この決算を受けて11日には26％も暴落して53.72ドルで終了。そして翌12日の場中には上場以来最安値の40.83ドルをつけて決算発表前から44％も低い水準になったが、この日の後半には切り返して58.50ドルで終了した。

　コインベースは仮想通貨取引所としてはアメリカでも最大手クラスの企業で期待も大きい。だが上場したタイミングがたまたま仮想通貨市場のピークに近かったため、その後株価は下げが続いてしまっているようだ。