トランプ関税の影響がジワリと出てくる米

トランプ大統領は3月から4月にかけて本格的に関税政策を発動させている。3月時点の米CPIはまだ上昇していなかったものの、4月以降には関税の影響による値上げの話が出てきている。今後影響が広がりインフレ率が上昇していけば、経済や金融政策といった幅広い分野に影響が出る。

ルイ・ヴィトンなど値上げ

　トランプ大統領は1月に就任してから、矢継ぎ早に前バイデン政権の常識を全て覆す政策を出してきている。

　その中でも経済的に影響の大きいものは関税政策で、トランプ政権は中国をはじめカナダやメキシコといった特定の国を対象とする関税政策や、自動車など特定の品目を対象とする関税政策を次々と打ち出してきた。

　さらに日本時間の4月3日に発表された相互関税は、それまでのどの関税政策よりも強く世界経済への影響懸念を高め、発表後数日間は株式市場が大暴落した。金融市場の動揺を抑えるためトランプ大統領は相互関税の一部を90日停止と発表したことで、ようやく市場が安定化した。

　トランプ大統領の関税政策は、政権発足前から「実施すればアメリカのインフレが再燃する」と言われていた。しかしまだ発足直後であるため、3月時点のインフレ指標はそれほど上がっていない。3月の消費者物価指数は2.4％で、2月時点の2.8％より逆に下がっていた。また今週30日発表予定の3月個人消費PCEデフレーターも、前月より0.2ポイント低い2.6％と予想されている。

　3月時点ではまだ関税政策によってインフレが再燃しているという指標は出ていないが、4月に入り関税の影響で価格の上昇が始まっている。最近になって仏高級ブランドのルイ・ヴィトンが、関税の影響を理由として米国内での製品価格を約4％引き上げと発表した。

　そして中国の通販「SHEIN（シーイン）」も、関税のためにアメリカ向けの製品を数十～370％と大幅値上げすることを発表した。

　さらに今後はすでに発動されている自動車関税や、今後発動すると述べている医薬品関税の影響も出てくる。企業は在庫を持っているため関税の影響は発動直後には出ないが、1ヶ月、2ヶ月と経ってからジワリと出てくる。

　アメリカのインフレが再燃すれば、経済や金融政策に確実に影響が出る。FRBは2022～23年に行ってきたハイペースの利上げを23年後半で止め、2024年後半には3回の利下げを行った。

　トランプ政権の関税政策がなければFRBは今年も利下げを続けていただろう。だがトランプ大統領の政策による影響が見えないため、実際は今年になって利下げを停止している。インフレが再燃すれば今後も利下げを停止して様子を見る必要があり、また場合によっては再度利上げをしないといけなくなることもある。