トランプ大統領とパウエル議長の対立鮮明

先週17日未明にパウエル議長が利下げに慎重な発言したことが気に入らず、その後トランプ大統領がパウエル議長を批判する発言を連発している。さらに解任に前向きな発言も行っており、両者の対立を懸念して週明けの為替市場では円高・米ドル安が進行している。

利下げをしないことに不満

　週明けにまた一段と円高が進んでいる。先週を1ドル＝142円20銭で終えた米ドル/円は、週明け21日は先週終値とほぼ同じ水準からスタート。しかしその後は午前中から午後にかけて円高・米ドル安が続き、午前11時頃には141円を割って昨年9月以来となる140円台をつけた。

　21日の円高・米ドル安の材料となったのは、アメリカにおけるトランプ大統領とFRBパウエル議長の対立が鮮明になってきたこと。そしてトランプ大統領はパウエル議長の解任に前向きな姿勢を示しており、解任を懸念して米ドル売りが増えたと見られる。

　トランプ大統領は就任直後からパウエル議長に対して不満を持っていたが、それは議長が景気下支えのために利下げを進めようとしないためであった。

　FRBは昨年後半にようやく利下げサイクルに入り、昨年12月までで合計3回、1％の利下げを行ってきた。だがトランプ大統領が就任前から掲げていた政策がインフレを再燃させるとの懸念から、今年に入ってからは利下げを止めて様子を見てきた。

　そして日本時間の先週17日木曜未明にパウエル議長が講演を行い、その中で「関税の経済的影響は予想より大きい可能性が高い」と関税政策が米経済に対して大きな影響を及ぼすと発言。さらに利下げに対する慎重な姿勢も示した。

　この発言によってNYダウはこの日（現地時間16日水曜）が699ドル安、翌17日には527ドル安と連日の大幅下落。さらに発言直後には141円台まで円高が進行した。

　トランプ大統領はパウエル議長が利下げに対し慎重だったことで、その後強く批判するようになった。パウエル議長の発言後の17日に大統領は「パウエル議長は自分の仕事をしていない。やるべきことが遅すぎる」と発言。また「（パウエル議長を）私が解任しようと思えば解任できる」とも発言していた。

　この発言に対しパウエル議長は反発し。2026年5月の任期満了まで続ける方針を示した。しかしトランプ大統領は18日にも「FRB議長が自分が何をするべきかわかっていれば金利は下がっているはず」とまた批判した。

　このように先週後半にトランプ大統領とパウエル議長の対立が鮮明になったことで、週明けの為替市場では米ドル売りが増えて1ドル＝140円台まで円高になった。

　今のところ大統領がFRB議長を解任できる権限はない。しかしトランプ陣営は、全国労働関係委員会（NLRB）のグワイン・ウィルコックス氏と、メリット制保護委員会（MSPB）のキャシー・ハリス氏の2名の高官を解任する権限を大統領に与えることを、連邦最高裁に請求している。

　この2名の解任権限が与えられるとの判決が出れば、同じ手法でパウエル議長の解任権限も与えるよう請求すると見られている。そちらも成功すれば議長は解任される。

　パウエル議長が解任されるということは、アメリカにおける中央銀行の独立性が失われたことを意味する。そのようなことになればアメリカの金融政策の将来が読めなくなり、米ドルを含めた金融市場は非常に混乱すると予想されている。果たしてトランプ大統領の解任の目論見は成功するのだろうか？