トラス外相が英の新首相に内定

英では7月に辞任を発表したジョンソン首相の後任を決める保守党の党首選が行われていた。そして5日午後8時過ぎになって結果が発表され、決選投票に残った2人のうちトラス外相が勝利して新党首になると発表。そして同時に次の首相に内定したことにもなる。

中国ロシアには強硬姿勢

　EU離脱という極めて難しい問題を仕切ってきたイギリスのジョンソン首相だが、ロックダウン中に首相官邸でパーティーを行っていたスキャンダルなどを理由として7月7日に突如辞任した。ジョンソン首相の辞任の経緯はこちらで詳しく述べている。

　イギリスは日本と同じ議員内閣制で、与党の党首が基本的に首相になる。したがってジョンソン首相が辞任したら、まずは与党・保守党が党首選を行って次期党首を決める。そして次期党首が自動的に次期首相になる。

　保守党の党首選は最初に多くの候補がいてもだんだんと振るい落とし、最後には2人で決選投票を行う方式。今回の党首選で決選投票に残ったのは、スーナク財務相とトラス外相だった。

　しかし決選投票になると結果が出る前からすでにトラス外相の方が優勢と言われ始め、日本時間の5日午後8時過ぎに発表された結果は予想通りトラス外相の勝利だった。これで保守党の新党首とイギリスの新首相が決まったことになる。トラス氏は6日に新首相として任命される予定。

　トラス氏は47歳の女性で、これでイギリスとしてはサッチャーとメイに続き3人目の女性首相となる。日本では女性の首相もこれまでいなかったが、年齢で見ても戦後最年少の首相は第1次安倍政権の52歳なので40代の首相は戦後出ていない。日本で47歳の女性が首相になるのは相当難しいのが現実だ。

　トラス氏は外相経験者だけあって外交に強いのだが、これまでロシアに対して「ウクライナから追い出すべき」など強硬な発言を行ってきた。また中国に対しても強硬派として知られている。

　つまり中国ロシアという旧共産圏の大国に対してはかなり厳しい首相になることが予想される。それが今後のイギリスにとって吉になるか凶になるかはまだわからない。しかしロシアとの対立が深まるにつれてイギリスを含む欧州では特にエネルギー事情がひっ迫し、今年の冬はかなり厳しくなると予想されている。

　イギリスでは8月末に、電気・ガス代の変動料金の上限が10月から80％も引き上げられると発表された。エネルギー価格の高騰は庶民にとって相当な不満となっており、トラス新首相はこのような不満も対処しなくてはならない。対中・対ロの強硬姿勢とどうバランスを取るのかに注目が集まる。

　しかし5日の結果はすでに予想されており、市場にとっては織り込み済だったと見られる。結果が発表された午後8時過ぎになっても、ポンド/円は161円台半ばのままあまり動かなかった。

　史上3人目の女性首相として、今後トラス氏がどのようにイギリスをリードしていくか金融市場は注視している。