ソフトバンクGが過去最大の巨額赤字

ソフトバンクグループが12日に2022年3月期の決算を発表。通期では1兆7000億円もの純損失となり、過去最大の赤字額となった。株式市場の下落によって投資してきた企業の価値が下がったことが巨額赤字の大きな要因と説明された。

昨年は史上最大の利益だった

　ソフトバンクグループ（銘柄コード：9984）が、12日に2022年3月期の通期決算を発表した。その内容によると、売上高は前年の5兆6300億円から10％増の6兆2200億円。税引き前損益は前年の5兆6700億円の黒字から8,700億円の赤字に転落。純損益は前年の5兆円の黒字から1兆7080億円の赤字に転落した。

　前年・2021年3月期の純利益5兆円という数字は、日本企業として史上最大の利益額だった。それまでの記録がトヨタ自動車（銘柄コード：7203）の2018年3月期における2兆5000億円だったので、その2倍という圧倒的な記録破りだった。そして2021 年3月期の日経225平均採用の225社の利益全体の中で見ても、ソフトバンクGだけで20％以上を占める驚異的な数字だ。

　しかしそこからわずか1年後に、日本企業として史上2位の赤字額となる1兆7080億円の赤字に転落した。1位はみずほフィナンシャルグループ（銘柄コード：8411）が2003年3月期に出した2兆3800億円の赤字。

　今期の巨額赤字は、主に株式市場で軟調な地合が続き投資の損失がかさんだためと説明された。特にソフトバンクGの看板ファンド・ソフトバンク・ビジョン・ファンドの第1弾と第2弾の合計で3兆7000億円以上の赤字となった。

　ソフトバンクGの利益は昨年半ば頃からすでに陰りが見えていた。昨年4～6月期の四半期利益は、前年同期の1兆2500億円から40％減の7,600億円。7～9月期は前年同期の1兆8800億円から81％減の3,600億円、そして10～12月期は前年同期の3兆600億円から87％減の3,900億円だった。

　昨年はまだ株式市場は堅調な動きが続いていた。それにもかかわらずソフトバンクGの業績が下降していたのは、投資してきた企業の株価や価値が下がったためだ。そしてソフトバンクGの投資企業には中国企業が多くあり、中国当局のIT企業に対する規制強化で株価が下がった企業が多い。

　典型的な例は昨年6月30日にNY株式市場に上場した中国の配車大手・滴滴出行（銘柄コード：DIDI）で、公募価格14ドルに対し初日に18ドルまで上昇し好調なスタートだった。

　しかしわずか4日後には中国当局からアプリ配信の停止を命じられ、その後も圧力が続いたために昨年末には上場廃止の方針を発表。株価は下がり続け、今週5月12日には1.5ドルをつけ公募価格の10分の1近くという惨憺たる状況だ。

　ソフトバンクGは滴滴出行に投資していたため、同社の株価下落によってかなりの損失が出ている。また昨年3月に上場した韓国のEコマース大手・クーパン（銘柄コード：CPNG）も、今年3月に発表した昨年10～12月期決算が巨額赤字だったために株価が下落した。

　しかし株式市場の下げは今後まだ続くと予想される。今期過去最大の赤字となったソフトバンクGだが、投資が基幹事業だけに株安が続けば来期もかなり厳しい決算になるのではないか。