延び延びになるフィナンシェのIEO

日本国内で3例目となるフィナンシェのIEOが発表されたのは昨年11月で、その時は「2022年夏までに実施」と発表されていた。しかし2022年も夏が過ぎてすでに秋になっているものの、IEOのスケジュールすら発表されていない。

すでに夏を過ぎている

　IEO（Initial Exchange Offering）とは、企業が独自のトークンを発行し、それを取引所経由で不特定多数の投資家に販売して資金を調達するもの。株のIPOにも似ているが、発行するのがトークンだけに議決権などのことは考える必要がない。

　以前はICO（Initial Coin Offering）といって企業が直接トークンを不特定多数の投資家に売り出す手法が世界で流行ったこともあったが、ICOは詐欺紛いの案件も多いため取引所を通すIEOの方が主流になった。

　日本では規制や税制などいろいろな問題のためになかなか普及しないIEOだが、これまで2件が行われた。1つ目はHashpalette（ハッシュパレット）というNFTコンテンツ流通のプラットフォームを運営する企業が発行したパレットトークン（PLT）のIEO。

　パレットトークンの販売取引所となったのはコインチェックで、2021年7月29日に正式に上場。上場前の販売価格は1枚あたり4.05円だったのだが、上場後に一時は90円を超える成功を見せた。

　2つ目はサッカーチームのFC琉球が発行するFCRコイン（FCR）で、これはGMOコインが販売取引所となり今年5月18日に上場された。だがFCRコインは販売価格が1枚あたり2.2円だったのだが、上場以降価格は下がり続け4ヶ月あまり経った9月下旬にはすでに0.35円と販売時の6分の1未満になっている。

　そしてIEO第3弾としてコインチェックによって昨年11月に発表されたのが、FiNANCiE（フィナンシェ）が発行するトークンだ。フィナンシェは企業のトークン発行を補助する事業などを行っており、ハッシュパレットと同様企業自体も仮想通貨関連の事業を行っている。

　発表当時は「2022年夏までにIEOを実施する」と述べられていた。ところがすでに2022年9月で夏どころか秋が深まってきているが、IEOは実施されていないどころか、スケジュールすら発表されていない。一体フィナンシェのIEOはどうなったのだろうか？

　ここからは推測になるが、おそらく2022年の仮想通貨市場の低迷を見て、コインチェックとフィナンシェはIEOを様子見に切り替えたと思われる。また5月のFCRコインの失敗も影響したと考えられる。

　今のところコインチェック・フィナンシェのどちらからも「IEOは中止する」あるいは「延期する」という正式な発表はなく、IEOはいずれ行う予定であることには変更はなさそうだ。ただし当初「2022年夏まで」と言っていたのに、その後実施スケジュールは全く続報がない。

　仮想通貨市場の低迷のため、今すぐにIEOをしようとせずしばらく待って市場が回復したら行うという方針に切り替えたのではないだろうか。しかし仮想通貨市場の回復がいつになるか予想することは難しいため、フィナンシェのIEOは下手をしたらかなり先になるかもしれない。